「だから私、あなたが帰っ……ひぁっ?!」
マァムの言葉は、突然に遮られた。驚くマァムの視線の先で、ポップが彼女の豊かな胸にむしゃぶりついている。それは、昨夜の
ヒュンケルの優しい愛撫とはかけ離れた、獣じみたものだった。唇に弄ばれていないもう片方の乳房も、形が変わるほど強く
掴まれている。
「な……っやだぁ……」
痛みに似た快感が、マァムを苛む。暴力のような行為に感じてしまっている自分が、マァムには信じられなかった。
「ひっ……あ……いやぁ……」
「どうして?」
ぬるりと乳首を舐め上げ、ポップは意地悪く聞いた。
「俺が好きなんだろう?どうして嫌がる?」
「だ、って……こんな、の……あっ」
胸の飾りを甘噛みしてやると、マァムは再び悶え、切なげに息を速めた。幼児がするように小さく首を横に振り、乱暴な
愛撫に耐える。
「ヒュンケ、ル……昨夜と、違うわ」
「そうか?」
当たり前だバカと、内心で舌を出しながら、ポップはマァムを弄び続けた。時折空いているほうの手の指でマァムの口を侵しながら、
豊かな胸を存分に味わう。彼女に恋してから、幾度となくこんな夢を見たが、夢の中のどのマァムよりも、本物のマァムはいやらしい。
胸と唇をいじってやっただけで、目に見えてよがっている。ヒュンケルはいつから、こんなマァムを知っていたのだろう。あるいは
ヒュンケルが、マァムをこんなにしたのだろうか。苛立つ思いを、どうにか抑える。まあいい、あと数時間は俺のものなのだ。
ヒュンケルにさえ見せたことのないような淫らな顔も、じっくりと見せてもらおう。少年特有の残酷さで、ポップは一計を思いついた。
「いやっ……あ……」
マァムが口走ったのを待って、ポップはわざと冷たくマァムの身体を突き放した。驚いて目を見張るマァムを尻目に、寝台を立ちかける。
「ま、待って!どうしたの?」
「嫌なんだろう?喜べ、解放してやる」
マァムの顔が、泣き出しそうに歪む。弱者をいたぶるのは快楽だと言った、あれは誰だったろう。ポップは冷笑し、言葉を続けた。
「思ったとおりだ。お前は、俺を愛してなどいない」
「え……?」
「昨夜のことは、酒に酔った勢いだろう。だから、昨日許せたセックスが今日はできない。違うか?」
「違うわ!」
マァムは必死の表情で否定する。
「す、好きだって、言ったじゃない!さっきだって」
「なら、証拠を見せろ」
「証拠?」
「自分で、してみせろ。俺によく見えるように、脚を開いてな」
マァムは訳が分からない様子だったが、やがて言葉の意味を悟ると、顔中を朱に染めて怒り始めた。
「そんなのっ……できる訳ないじゃない!」
「ならそれでいい。これで終わりだ」
言い捨てて、ポップは寝台を背に立ち上がった。これで、マァムがヒュンケルに幻滅するのもいいが、それではあまり面白くない。
だがそうはならないだろうと、ポップは確信していた。自分の愛をヒュンケルに信じてもらえないことは、マァムにとって一番の
弱みだ。
『昨夜も言ったわ。どうして疑うの?信じてくれないの?』
泣きながら、マァムは言った。昨夜、マァムがヒュンケル本人に愛の告白をし、彼にそれを否定されたのは明らかである。
だからこそ、『お前は俺を愛していない』という言葉を否定するために、あれほど躍起になったのだ。
「待って」
そらきた。こみあげる笑みを抑え、ヒュンケルらしい無表情で振り返る。今にも泣き出しそうな顔で、マァムがベッドの上に座り込んでいた。
「見せたら、本当に……信じてくれるの?」
「ああ」
マァムは、これ以上ないほど顔を赤らめ、拳を握り締めた。
「まさか、着たままするつもりじゃないだろうな」
恐る恐るミニスカートに手を入れ、下着に触れたマァムの手が、金縛りにあったように止まった。信じられない様子で、ヒュンケルの
顔をしたポップを見上げる。
「だって……私」
「嫌なのか?」
威圧的なポップの声音に、マァムは口を噤んだ。震える手でスカートに手をかけ、脚から引き抜く。そうして、思い切ったように
立て膝になると、薄いブルーのショーツをずり下ろした。
マァムがはっと顔色を変える。つぅ、と細い銀糸が、マァムの秘所からつたって、ショーツへと落ちたのだ。
「何だ。その分ならすぐにイけそうだな。胸を舐られたのがそんなによかったか」
「………っ」
マァムは恥じらうようにぐっと内股に力を込めると、そのままさめざめと泣き始めた。少しやりすぎたか。ポップの心の表面にそんな思いが
掠めたが、黒々と渦巻く嗜虐心に飲まれて消えた。
「それで終わりか?」
無機質なポップの声に、マァムはのろのろとベッドの上に腰を下ろし、膝を立てた両脚をわずかに広げた。初めて火に触れる子どものような、
覚束ない手つきで、細い指を小さく動かし始める。
素直なものだ。相手がヒュンケル以外の男なら、マァムは舌を噛み切ってでもこんな屈辱を受け入れたりはしないだろう。そういう女だ。
―――そういうマァムしか、俺は知らない。卑屈な思いを、ポップはすぐに薙ぎ払った。だから、これから知ろうとしているんじゃないか。
可愛い、しおらしい、淫乱で恥知らずなマァムを。
「脚を広げろ。ゆっくりでいい」
「……っん……」
マァムは恥じらいながらも、徐々に脚を開いた。
「んうっ……あ……はぁ……」
蕩けるようなマァムの声に応じるように、マァムの花は濡れそぼり、蜜を零し始めた。自らの手で愛液を擦り上げるその姿を、あの
聖母のように清らかなマァムと誰が信じよう。
支配欲にとりつかれ、その場所を凝視するポップの視線に気づき、マァムは心底恥ずかしそうに身を捩った。
「どうした?見られて感じているのか」
「ち、違うわ……こんな、の、見られたくない」
「俺は見たい」
ポップは言うなり、マァムの足首を掴むと、高々と持ち上げた。マァムはあっと声をあげたが、抗うでもなく、熱にうかされたような
表情でされるがままになっている。
「見ていてやる。イってみせろ」
「……は、い……」
マァムは小さくいらえを返すと、細い指を懸命に動かし始める。豊かな乳房の先端まで薄桃色に染まったマァムの全身は、それ自体が
たとえようもないほど美しかった。
「あ、あ、イクっ、イッちゃう……っ!」
「………!」
マァムがぐったりと脱力するまで、彼女のそこがまるで生き物のようにひくひくとわななくのを、ポップは瞬きもせずに見つめていた。
人形のようになったマァムの脚を投げ出し、ポップは哄笑したい思いだった。自分のMPの何十分の一しか消費しない魔法を一つ唱えて、
ほんの少し兄弟子の口調を真似てやれば、あのマァムが、こんな淫猥なことまでやってみせる。数年来自分が求め続けていたものが
ひどくちっぽけなものに思えた―――そう思いたかった。
「これで……信じてくれた?」
すっかり息のあがったマァムが、縋るように尋ねてくる。
「ああ。礼をしなくてはな」
ヒュンケルはきっとこんな風にマァムに笑うのだろうと、想像した通りの優しい笑顔を作ってやると、マァムは安堵したように微笑んだ。
ポップはベッドに敷かれている純白のシーツをびりりと咲くと、ちょうど人の頭を一周する程度の細い帯を作った。不思議そうに
その様を見ていたマァムの目を帯で覆い、頭の後ろで結んで、目隠しをする。
「何、これ……?」
「まじないだ。俺がいいと言うまで、取るな」
何か言いたげなマァムの唇に、口付けを一つ、落としてやる。
そうして、まじないが解けたら、終わりだ。お前への片思いも、友情も、復讐も。
⇒Next
|