改めて彼女の女の部分に触れると、驚いたことに、さっきよりも濡れていた。ずっといじってなかったのに。
処女でも、相手のを舐めてて感じることなんかあんのかな。俺は慎重に指を動かし、彼女から溢れ出るものを弄んだ。
「んっ……あ……」
ひくひくと、胸の下で彼女の身体が震える。取れたての若鮎はこんな感じかもしれない。柔肉を押し広げ、呼吸するように蠢く芯を弄うたび、 彼女は可哀想なぐらい素直な反応を見せた。
このぶんなら、大丈夫だろう。俺は深呼吸をすると、何も入れたことがないという、その小さな穴に、人差し指を突き入れた。
「いっ……!!」
しかし彼女は、下半身の全てを強張らせ、俺を拒んだ。俺は大腿の内側を撫でて、力を抜くように諭す。すぐにでも奥まで押し入りたいのを、 反対の手で手首を捕まえて抑えた。乱暴にするな。本当にぶっ壊しちまう。すっかり内面に同化した悪魔に、俺は懸命に言い聞かせた。
ゆっくりと、彼女の中で指を動かす。指に纏わりつく、襞の一つ一つが、ひどく温かくぬめっていた。そのくせ、指一本がいっぱいいっぱい みたいに、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる。
この中に、指なんかじゃない、一番挿れたいものをぶちこむ。それを想像するだけで、俺のげんきんな息子はむくむくと元気を取り戻した。
「梅村さん……なんでこんなに、濡れてるんですか?」
「えっ?」
彼女は面食らったように声をあげた。その声に、俺もまた「えっ」と同じ台詞を返しそうになる。
しまった。何を聞いてるんだ俺は。いや俺じゃない、今のは息子が。うちのバカ息子が。
泡を食う俺に、彼女は目を伏せて答えた。
「わ、分かんない、けど……多分、榊くんが喜んでくれたからだと、思う」
「俺?」
意外な答えに、俺は間抜けな鸚鵡返しをしてしまった。梅村さんは、怒ったような照れたような赤い顔で、早口に言った。
「だって……好きな人が喜んでくれたら、嬉しいから……そうじゃない?」
黒々と潤んだ、リスの瞳が、虚勢を張って勇ましく見上げてくる。その可愛らしさにしばらく見惚れていたが、後でもっと重要なことに 気付いた。
好きな人が喜んでくれるから。何てことだ。これは物凄い、コロ何とかの卵だ。これまで何百人もの女を抱いてきたが、俺はついぞそんなことは 考えなかった。挿れたはめたの世界じゃない、もっと崇高な、いわゆるひとつの……。
それ以上考えると髭の剃り跡が余計濃くなりそうなので、止めた。俺はもう辛抱たまらず、ぱっつんぱっつんに張った息子を構えた。

―――うっ……わ……!!
押し入ったそこは、想像以上だった。狭い。きつい。食いちぎられる。いや、でも食いちぎられてもいい。 俺は阿呆みたいに白目を剥き、ぽかんと口を開けて、その感覚に溺れた。
まだ先を挿れただけなのに、こんなんで大丈夫なのか。さっき出したばっかなのに、もういっちまいそうだ。 際限なく開かれていく口を、あるとき俺ははっと閉じた。馬鹿野郎。心配すべきは俺じゃない、梅村さんだ。 見れば、彼女は顔をしかめて、必死に痛みに耐えていた。
「う、めむら、さん……抜き、ますか?」
「ん、ん……大丈、夫」
彼女は弱弱しく笑い、気遣うように俺の二の腕をそっと撫でた。
「でも……」
「いいの。大丈夫だから……早く」
梅村さんはなおも強がって、力を振り絞るように上身を起こした。そして、俺の耳に唇を寄せ、囁く。それは本当に小さな、風の吹く音に紛れてしまいそうなほど、 儚い声だった。なのに、俺の耳に、何よりも心に、深々と刻まれて、永遠に消えることがない。そういう声だった。
―――さかきくんに ぜんぶ あげる

「ーーーーっ!!」
高く叫んだのは彼女だった。だけど俺も多分、何かを叫んでいただろう。すっかり自失して、俺は彼女の中で暴れ狂っていた。
彼女の奥と、そのまた奥とを、何度も何度も往復する。びしゃびしゃと、俺の先走りとも彼女の蜜ともつかない液が、弾け飛んでは シーツに零れた。
「あぁっ!あぁっ!や……あぁぁっ!!」
彼女の甲高い悲鳴が、耳に突き刺さる。それさえ、何故だか心地良い。
「はーっ……はーっ……」
俺は捕食前の肉食獣のように、深い呼吸を繰り返した。べろりと彼女の耳裏を舐め、浅く腰を動かしながらその時を待つ。 この一回で精根尽き果てても構わないと、本気で思った。
「っ………!!」
彼女が身を強張らせると同時に、俺もまた、真っ白な光を見た。痙攣するように蠢くそこへ、どくどくと己を注ぎ込む。 何度も何度も、彼女の中でそれを突き立てて……その先を何も覚えてないところを見ると、そのまま眠ってしまったらしい。 夢の中で、俺は彼女の全部を―――さらさらと流れる黒い髪を、プリンのように甘やかな胸を、しなやかに細い身体を、 抱き締めていた。

⇒epilogue



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