―――とはいったものの。
いざ、梅村さんに覆いかぶさったところで、俺は臆病風に襲われた。
―――初めて、か……。
さもありなん、と思わせる、染み一つない滑らかな肌。汚れを知らない、とはこのことだろう。
俺なんかが抱いて、ぶっ壊れたりしないだろうか。喧嘩においてもセックスにおいても、俺は百戦錬磨だが、今までの戦いでは、
相手もまた百戦錬磨だった。その俺が処女を抱くなんて。鉄パイプをもって赤ん坊に殴りかかるみたいなもんじゃないのか?
―――ええい、ぱぱよ!
『どうにでもなれ』という意味らしいその言葉を心の中で叫び、俺は梅村さんの身体からタオルを剥ぎ取った。
「はわぁっ?!」
現れた肢体に、俺は卒倒しかけた。陶器製の人形といわれても、多分信じただろう。それほど、彼女の裸は美しかった。
若鹿のよう、とでもいうのか。決して貧相ではないのだが、しなやかに細く、整っている。発展途上の胸と、
よく締まったウエストのラインが目に眩しい。
「どうしたの?」
「あ……あんまり綺麗だから、つい」
彼女は俺の言葉にさっと頬を染め、はにかんだ。その笑顔に、俺はまたも樵の一撃を食らう。
つい口をついたのだが、素直に褒めて良かった。また『何でもない』なんて誤魔化せば、彼女を不安にさせてしまったことだろう。
決めた。何でも素直に言おう。
俺は新たな決意とともに、彼女の身体にむしゃぶりついた。
「きゃっ!」
「すげぇ綺麗です、梅村さん」
首筋と肩と背中とを、順繰りに撫で回し、耳朶に舌を纏わせながら囁く。
「鎖骨とか、耳とか、全部……食っちまいたいぐらい、綺麗だ」
「んっ……」
恥ずかしそうに、梅村さんは眉を寄せた。それさえ可愛くて、今度はついばむように、彼女の唇にキスをした。
わざと音を立ててやると、彼女は照れたように笑う。
「何か、恥ずかしい」
彼女の初々しさが微笑ましくて、俺も少し笑い、彼女の双丘に手を伸ばした。キスの後で胸に行くのは、いつもの手順だ。
―――はにゃ?
しかし、俺が余裕ぶっこいてたのはそこまでだった。手の内にある、この感覚。この張りと滑らかさ、そして柔らかさ。
俺はそいつを知っていた。
―――これは……まさしくアグネスプリン!!
俺は身体をずり下げ、まじまじと梅村さんの胸に見入った。形はそれほど似ていないが、感触はほぼそのままだ。
ということはこのてっぺんのやつは……さくらんぼ?まさかこんなところで、ちょっぴりデラックスになったアグネスプリンに
出くわすとは。俺は夢中で目の前のプリンをたいらげた。
「あっ……やぁっ!!」
頭の上から、梅村さんの切なげな声が降ってくる。俺はその声と、口の中で食むプリンの甘さと、左手で掴んでいるもう一つの
プリンの柔らかさに酔った。右手で探り当ててみれば、尻朶もちょっとプリンっぽい。同時に3つのプリンを貪り、俺は
幸せの絶頂にいた。
それから、どこに触れているときでも、俺は必ず片手か唇で、梅村さんのプリンを食っていた。
「榊、くん……私の胸、好き?」
「好きです!」
おずおずと尋ねてくる声に、間髪入れず即答する。面食らったように目を見開き、彼女はまた、はにかみながら俯いた。
「だけど、そんなにしたら、おっきくなっちゃうよ」
「いいです。どんなになっても、俺は梅村さんのプ……胸、好きですから」
一瞬本音が出そうになりながらも、俺はきっぱりと言った。彼女のほうからキスしてきてくれたのは、そのときが
初めてだった。
「へへ……嬉しい」
ぼっ、と顔が熱くなるのを感じる。これがあれか。想い想われるってやつか。初めての感覚に、俺は胸まで熱くしていた。
幸せで、どうかなっちまいそうだった。
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