先日、機会がありまして、バーダックのアニメスペシャル(『たった一人の最終決戦』)を再見しました。
やっぱり、いい!20歳過ぎた今でも力いっぱいそう言えます。40分という短時間のなかで、あれだけのストーリーを
見せるというのは凄いことです。
最近知ったのですが、あれは鳥山先生ご本人ではなく、アニメスタッフの方が一からお考えになったお話なんだそうです。
原作のフリーザ編にバーダックが2コマだけ登場するのは、鳥山先生がアニメを気に入られて、「逆輸入」なさった
んだとか。巨匠・鳥山明をそこまで感激させるなんて、これまた結構すごいことですよね。
ドラゴンボールをご存知ない方、あの漫画は筋肉ばっかりであんまり好きじゃないわ、って方にこそ是非見て
頂きたい。ストーリー性といいエンターテイメント性といい、間違いなく一流のアニメです。
そうは言っても見れそうにない、という方へ。
既にネット上で色んな方が書かれてるので、今更難なんですけど、書きたいので書かせて下さい!(素直に)
『たった一人の最終決戦』あらすじです。例によって一行空けて始めます。
惑星カナッサ。その辺境の星に住む民は、微弱な戦闘力しか持たないが、不思議な「力」を持つと噂されていた。
これに興味を持ったのが、侵略者・フリーザである。
フリーザはその圧倒的な戦闘力と財力とをもって、宇宙に住む様々な
戦闘民族を傘下に雇い入れ、星の「地上げ」を行っていた。地上げとは、ターゲットを定めた星に戦闘民族を送り込み、
原住民を皆殺しにさせた上で、フリーザに差し出せる、原始的ながら至極簡単で合理的な侵略行為である。
カナッサ星には、「サイヤ人」という戦闘民族が派遣された。サイヤ人は満月を見ると大猿に変身し、類稀な戦闘力を
発揮する。そのうえ、戦いで負った傷を回復させると戦闘力を何倍にも増すという、特異な民族である。彼らは
その実力と忠実さから、フリーザに重宝されていた。
その期待に応え、派遣から一ヶ月を待たず、サイヤ人はたった5人でカナッサを壊滅状態に陥れる。
5人はいずれも、サイヤ人のなかでは最弱とされる最下級戦士である。うち一人、バーダックという男には、このほど
次男が誕生した。仲間4人は会いに行ってやれと冷やかすが、バーダックは「何の見所も無い最下級戦士の糞ガキに、わざわざ
会いに行くバカがどこにいる」と冷たく吐き捨てる。
そのとき、瓦礫の下から一人のカナッサ星人が現れ、バーダックに襲い掛かる。突然のことに油断したバーダックは、まんまと
項に一撃を食らってしまう。バーダックの仲間の一人、トーマが気功弾を放つと、被弾したカナッサ星人は白い炎に包まれ、燃え上がった。
しかし、侵略者への憎しみに燃えるカナッサ星人は、最期の力を振り絞ってバーダックに呪詛の言葉をかける。
「私は今、お前に未来を予知できる幻の拳を放った!お前ら一族の行く末が見えてくるはずだ。
言っておくが、お前たちには呪われた未来しかないぞ。わが一族と同じように、
滅び去るのみなのだ。その姿を見て、せいぜい苦しむがいい!」
業火の中、カナッサ星人は哄笑した。バーダックは激昂し、自らの気功弾でとどめをさす。カナッサ星人は即死したが、バーダックも
またその場に倒れこみ、気絶してしまった。
未来を予知できる力―――それこそがカナッサ星人の「力」なのだと、まだ誰も知らない。
母星である惑星ベジータで医療チームの治療を受けながら、バーダックは不思議な夢を見る。
自分とそっくりな赤ん坊が、見たことのない青い星で、拾われ、育てられ、たくましく成長する姿。その間に間(まにま)には脈絡なく、
血まみれに傷ついた仲間・トーマの姿も見えた。
目を覚ましたバーダックは、一緒に帰還した仲間の行方を医師に尋ねる。そしてバーダック一人を置いて新しい星へ仕事に行ったと
聞くや、「俺だけ仲間外れにしやがって」と苛立ちながら、追尾を急いだ。
宇宙船の打ち上げポイントへ向かって走る途中、バーダックは赤ん坊の泣き声を耳にする。振り向けば、そこは新生児
の安置室であった。泣き叫ぶ赤子は、バーダックに瓜二つである。彼の次男に間違いない。先ほどの夢のこともあり、バーダックはその姿に吸い寄せられる
ように、部屋に面したガラス窓に掌をつく。赤子の名札には、「カカロット」と記されていた。
再び、バーダックを不可思議な幻が襲う。大地から火を吹き、爆発する惑星のビジョンである。バーダックは混乱し、頭を振っ
て幻を追い払った。
気を取り直すように、左眼に装着している戦闘力計測装置(スカウター)で赤ん坊を計ると、装置には「2」と表示される。間違いなく、ただの「最下級戦士
の糞ガキ」である。
「屑が!」
言い捨てて、バーダックは先を急いだ。
派遣先の惑星で、トーマ達4人はぼろぼろに叩きのめされていた。原住民によって、ではない。雇用主であり、彼らサイヤ人に
目をかけてくれていたはずのフリーザの、側近によってである。「何故こんなことを」と問うトーマに、側近は「フリーザ様の
ご命令だ」としか答えない。殴り飛ばされ、トーマの身体は異星の大地に叩きつけられた。
遅れて到着したバーダックは、荒廃した惑星と、山積された原住民の死体のなかに、自分の仲間の変わり果てた姿を見つけ、
愕然とする。最下級戦士とはいえサイヤ人を、こんな辺境の星の住民が殺せるはずはないのだ。
虫の息のトーマを抱きかかえ、何があったと夢中で聞くと、トーマは余りにも意外な答えを口にした。
フリーザが裏切ったのだ、あいつはサイヤ人を利用しているだけだったのだと。半信半疑のバーダックに、トーマは
血反吐を吐きながらも懸命に訴える。今すぐ惑星ベジータに帰って、仲間を集めろ。サイヤ人が徒党を組み、命がけで
闘えば、フリーザとて倒せるかもしれない、と。
「サイヤ人の強さを、見せてやれ」
不敵に笑うと、トーマはその表情のまま絶命した。バーダックは立ち上がると、トーマの腕に結ばれていた白布を解き、
その血まみれの顔を拭ってやる。手の内に握り締め、他の仲間たちの無残な遺骸を見渡すうちに、白布は鮮血に染まった。
げらげらと笑いながら現れた、フリーザ側近の部下と対峙し、バーダックは血染めの布を額に巻きつける。
信じられないことが起きていた。サイヤ人とはいえ、たかだか最下級戦士一人に、フリーザ側近の部下が次々と
殺されていくのである。荒廃した赤い空の下、血染めの鉢巻を翻し、獅子奮迅の戦い振りを見せるその姿は、悪鬼の如しであった。
バーダックをそこまで強くさせたのは、ひとえに、殺された仲間の無念であった。サイヤ人は一人一人の戦闘力は
大したことはないが、徒党を組むと凄まじい力を発揮する。それこそが、フリーザがサイヤ人を恐れ、根絶させようと思い至った
理由だったのである。
部下達を倒したバーダックの前に、フリーザの側近本人が現れる。まだフリーザが裏切ったとは信じられないバーダックは、
「どうしてあんたが、こんなことを」と詰め寄るが、側近は何も言わずに口から強大な気功弾を放った。バーダックは
吹き飛ばされ、姿を消す。
側近は帰還命令を受けたため、死体の確認をせずに急いでその場を引き上げる。しかし、バーダックは生きていた。
一緒に吹き飛ばされた仲間の死体が盾になり、奇跡的に助かったのである。
仲間の死に顔を見ながら、バーダックは茫然と呟く。
「フリーザ様は、本当に、俺たちを……」
フリーザはサイヤ人の強さを認め、その強さを発揮するための仕事を与えてくれた。サイヤ人もまたその期待に応え、
命がけで戦ってきたのである。そのフリーザが、裏切るなど。バーダックは依然、現実を受け入れられずにいた。
バーダックは一人、惑星ベジータへ向かう。フリーザ本部はこれを把握したが、バーダックを取り逃がした側近を、
フリーザは責めなかった。どうせ星ごと爆破するのだから、同じことだと。
「久しぶりに、この宇宙で最高のショーが見られそうですね」
宇宙船の窓から惑星ベジータを臨むフリーザの瞳は、狂的な残酷さに満ちていた。
惑星ベジータに到着する寸前、バーダックは二つの宇宙船を目撃する。一つは惑星の付近を徐行するフリーザの
巨大宇宙船。惑星ベジータごと、サイヤ人を滅ぼすつもりなのかと、バーダックは予感する。
もう一つは、バーダックが乗っているのと同じ、一人乗りの宇宙ポットである。惑星ベジータから打ち上げられた
らしく、バーダックとは反対に、宇宙に向かって飛び出していく。そのポットに乗っていたのは、バーダックの息子、
カカロットであった。最下級戦士の最初の仕事として、辺境惑星の侵略を任されたのである。まるで運命を暗示するように、
父子はすれ違い、永遠の別れをとげた。
母星に到着したバーダックは、ぼろぼろの身体を、宇宙船の係員に驚かれる。大丈夫だとその手を払うバーダックに、係員は
なおも言葉をかけた。惜しかったな、今お前の息子を打ち上げたところだ、もう少し早く帰れば会えたのに。バーダックは
構わずに歩を進めるが、係員のある一言に足を止める。
「たしか、地球とかいう辺境の星にな。太陽系の、青い星だ」
カカロットが地球へ。青い星へ。
じわじわと、バーダックには真実が見え始めた。未来を予知できる幻の拳、それを受けてから見るようになった数々の幻が、
何を意味するのか。
自分と瓜二つの少年、青い星。今まで見てきたのは本当の未来―――彼の息子・カカロットの将来だったのだ。
ということは、カカロットと初めて会ったときに見た、あの星の爆発は。
「まさか……!!」
バーダックはサイヤ人の集う酒場を目指し、基地へと飛び込む。ぼろぼろの身体をひきずり、長い回廊を歩きながら、
バーダックは先ほどの確信を反芻していた。あれが未来。全て、これから起こる、現実。
気絶しかけたとき、バーダックは再び予知夢を見た。今までよりもはっきりと、カカロットの地球での姿が見える。
そして、惑星ベジータの爆発に照らされ、はしゃぎ笑うフリーザの笑顔も。
バーダックは獣のように咆哮し、立ち上がる。フリーザが許せなかった。必ず殺してやる、その思いだけが、傷だらけの
バーダックの身体を突き動かしていた。
酒場に到着したバーダックは、他のサイヤ人に危険を訴える。フリーザは惑星ベジータごと、サイヤ人を根絶やしにしようとしている。
トーマも他の仲間も、既に殺されてしまった、と。
しかし、誰も信じる者はいなかった。この星が無くなるだと、フリーザ様が裏切るだと。そんなこと、あるはずがないだろう。口々に
笑われ、バーダックは叫んだ。
「糞ッ垂れが!もう頼まん!てめぇら……全員、地獄へ落ちろ!!」
酒場を出たバーダックは、外へ向かって走る。階段を駆け上がり、息をつき、目を上げたところで、バーダックは再び幻を見た。
見覚えの無い惑星に立つ、成長した息子の後姿。バーダックは彼に向かって手を伸ばすが、ある瞬間、自分とそっくりの息子の
姿がぐにゃりと崩れ、フリーザの姿に変わる。驚愕するバーダックは、そのまま真っ赤な炎に包まれてしまう。
現実に立ち返り、更に走ると、バーダックは基地の外に出た。バルコニーの欄干に手をつき、空を見上げれば、そこには太陽に似た巨大な
光体が輝いている。フリーザの宇宙船が、肉眼で見える距離まで近づいているのである。バーダックはつい先程の幻を
思い出す。この身体を焼き尽くす、赤い業火。それは恐らく、ほんの数分後の現実なのだ。
空を睨みつけながら、バーダックは拳を握り締める。あれが運命。あれが未来。それならば。
「俺が……この、俺が……未来を、変えてやる!」
バーダックは一気に空へ飛び出すと、そのまま一直線にフリーザの母船へと向かっていった。
フリーザの母船からは、バーダックを目掛け、フリーザ配下の戦士が無数に襲い掛かってくる。バーダックは拳で、
気功弾で、それらを次々と薙ぎ払い、ひたすらにフリーザを目指していった。
その様を見ていたフリーザは、側近に宇宙船の上部ハッチを開けるよう命じる。それは即ち、フリーザ自らが出向き、
反逆者・バーダックごと惑星ベジータを破壊することを意味していた。外には、バーダックを仕留めるべく戦っている
部下達が大勢いる。星ごと吹き飛ばす気功弾を撃てば、部下達とて無事ではいられないだろう。側近はそう進言しかけるが、
フリーザの苛立ちを悟って、すぐさまハッチの開放にかかる。数百の戦士を蹴散らしながら、闘志を剥き出しにして立ち向かって
くる反逆者。その名も無い最下級戦士の姿は、フリーザが恐れたサイヤ人の姿そのものであった。
「出て来いフリーザ!俺は貴様が許せねぇ!」
数人の戦士に取り押さえられながら、バーダックは高らかに叫んだ。ハッチが開いたのはその時である。
暴君・フリーザの降臨に、戦士たちは萎縮し、戦うことを忘れてしまう。そんななか、バーダック一人が不敵に
笑っていた。
フリーザは眉一つ動かさず、反逆者と数百の部下、そして惑星ベジータを見下ろす。そして指先に、ほんの小さな
光の塊を作り出した。
バーダックは両手を広げ、誓いのように語り始める。
「これで……全てが、変わる。この惑星ベジータの運命。この、俺の運命。カカロットの運命……
そして、貴様の運命も!」
バーダックの掌に、フリーザが指先に灯している光の十倍ほどもある、蒼い気功弾が宿る。
「これで最後だぁーーーっ!!」
バーダックの全闘気を込めた気功弾が、フリーザに向かって放たれた。
フリーザは目を見開き、甲高く笑い声をあげる。その瞬間、悪夢のような光景が繰り広げられた。指先の光は一挙に大きさを増し、バーダックの
気功弾を他愛もなく吸い込んだのである。
「な、何っ?!」
驚くバーダックの眼前で、フリーザの光は際限なく肥大していく。その絶望的な光景に、バーダックは身動き一つ
とれなかった。やがて、フリーザが指先をほんの少し動かすと、恒星を思わせるその巨大な光塊は、数秒のうちに
バーダックを、そして周囲にいた戦士たちを飲み込み、惑星ベジータへと落ちていった。
予知通り、全身を炎に焼かれながら、バーダックは最後の幻を見る。それはフリーザと、成長した息子カカロットが、
向き合って立つ姿であった。最下級戦士の息子が、あのフリーザと。
「カカロットよ……!」
命の尽きる瞬間、バーダックは唇の端で笑っていた。最後の最後に、初めて息子に名を呼びかけながら。
バーダックを飲み込んだ光弾によって、惑星ベジータは炎に包まれていく。フリーザはその様を見、「綺麗な花火」と
子どものように手を打って喜んでいた。
一瞬のうちに、宇宙に閃光が瞬き、闇に帰する。惑星ベジータの消滅である。地球へ向かう途中、眠っていたカカロットが、
父親の声を聞いて目を覚ましたのは、そのときだった。
『カカロットよ……俺の遺志を継げ!サイヤ人の、惑星ベジータの仇を、お前が討つんだ!』
カカロットのポットが飛び去った後を、真っ赤な鉢巻が、見届けるようにひらりと舞い落ちていった。
地球の片隅のある山。そこに住む老爺が、火がついたように泣く赤ん坊を発見する。赤ん坊の尻には、サイヤ人の
特徴である猿の尻尾が生えていた。老爺はそれでも少しも臆せず、こんなところに置いておくわけにはいかないと、
引き取ることを決意する。
「名前は何としようかのう……」
抱き上げた赤ん坊の向こうに、青々と晴れ渡る空を見つけ、老爺は赤ん坊の名を思いつく。老爺の名・孫悟飯(そんごはん)から
苗字と一字をとり、「孫悟空(そんごくう)」と名付けたのである。
「悟空や、元気に育つんじゃぞ!」
高い高いをされて、孫悟空―――カカロットは、無邪気な笑い声をあげるのだった。孫悟空の冒険譚、ドラゴンボールの
物語の始まりである。
以上です、って長えぇぇぇよ!(『花嫁』より長ぇよ!)(何て要らないバージョンアップ)
すいません。でもほんとに大好きなんですよこのアニメ……。書いてて幸せでした(ほふぅ)(うっとり)。
そういうわけで、一言で言っちゃうとドラゴンボールの「エピソード1」的番外編です(一言で言えちゃったよ)(何だったの
あの無駄な大長文)。
さすがはドラゴンボールといった感じで、何といっても戦闘シーンが格好良く、痛快そのものなんですけど、脚本そのものも
めちゃくちゃ面白い。因果応報、歴史の流れ、運命に逆らう人間、父と子。たった40分のアニメによくぞここまで、
というぐらい、たくさんの要素が詰まってます。ほんとに面白いので、機会のある方にはぜひ見て頂きたい!お勧めです。
では、例によってここから妄想解釈です(この時点でもう誰もいない気がするよ)。例によってうざさ爆発ですよ☆(よ☆じゃねぇよ)
このアニメの魅力は何かって、まずは何を置いても主人公・バーダックの格好良さですよ!もう最高!父ちゃん格好良い!外見的には、
悟空を目つき悪くして、左頬に十字傷つけただけなんですけど、中身は全然違うんですよ。爽やかで天真爛漫(や、ブウ編では
かなりアレでしたがw)な息子とは対照的に、物凄いダーティヒーロー。何たってのっけから、罪も無い異星人を
虐殺してますから(そんとき大猿になってるしね!)(どう見ても敵キャラ)。だけど、その血塗られた運命の中で、
必死に生きようと足掻く姿が、何とも言えず魅力的なんです。仲間の血で染めた鉢巻巻いて、目を上げるところなんか、
もう鳥肌ものですよ。
びっくりしてしまうのが、この凶暴・むさくるしい・筋肉ダルマと三拍子そろった骨太キャラを、女性の声優さんが演じて
らっしゃるってことです。「おっす、オラ悟空」でお馴染み、野沢雅子さん。いくら役の幅が広いったって、あれを演って
違和感ないって、どんだけの演技力なんだ。ぶっちゃけ第一声、「何の見所もない最下級戦士の糞ガキに〜」でもう
惚れてました(早っ!)。好きだわー、この方の悪役声。はるか昔、映画版のドラゴンボールで、
やっぱり悟空そっくりの悪役をやっていらして(そいつはターレスっていうんですけど)(このオタクは)、映画館で見て幼心にきゅんと
きちゃったのを思い出します。何かこう、普段明るかったり爽やかだったりする人の鬼畜声ってぐっときませんか?!(同意を求めるな)
そして脚本。考えれば考えるほど、こいつは深い!何も真理とか道徳とかを追究してるわけじゃなくて、何ていうか、
時代劇チックな重み・面白みがあるんです。圧倒的に人間を押し流す歴史の流れがあって、それは単なる神様の悪戯ではなく、
人間自身の宿業が絡んでいるために、人間は絶対に逆らえない。でも、抗う。たとえ運命を覆せなくても、その姿の何と
崇高なことか。もうあれです、侍の世界です(侍が何かよく分かってないけど)(じゃあ歴史とか言うな)。
宿業とは即ち、サイヤ人が数多の異星人に対して行ってきた殺戮です。カナッサ星人は今際の際に、「お前たちには
呪われた未来しかない」と言い残しますが、それは比喩ではなく、実際にサイヤ人は犯した罪によって呪われている。
いわば因果応報、滅びるべくして滅びるわけです。
けど可哀想なことに、サイヤ人は何も好き好んで人殺しをしてるわけじゃあないんです。純粋に生活のためにやったこと。
何でそれが分かるかと言うと、バーダックはじめサイヤ人が、雇い主であるフリーザに物凄く感謝をしているからです。
サイヤ人はフリーザを「様」付けで呼びますが、それは何も、フリーザが強いから媚びているのではありません。何故ならバーダックは、
仲間の死体を前にしてなおフリーザの裏切りが信じられず、「フリーザ『様』は本当に、俺たちを……」と呟いています。
凄い信頼関係ですよね。それは何もバーダックに限ったことではなくて、他のサイヤ人も、バーダックが一緒にフリーザと
戦おうと決起を訴えたとき、一笑に付しています。フリーザ様が裏切る、この星がなくなる、そんなことあるわけないじゃないか、と。
何でここまでフリーザを信じきってるのか?それは多分、フリーザとの雇用関係が、彼らサイヤ人にとって凄く有り難かったからじゃ
ないかなぁと思うんです。サイヤ人は確かに強いけど、強いだけじゃどうしようもありませんよね、戦って何か(食料とか資源とか)
を奪い取る相手がいなくちゃ、共食いするしかない。自力で生産する力がないと。これは本編の話になりますが、悟空こと
カカロットは、地球に降り立ってからこの方、ただの一度も働きません。ただただ強くなる、それだけ。これは戦闘力は
あるけれども生産性がまったくない、サイヤ人の本質を表してるんじゃないでしょうか。そんなサイヤ人に、宇宙へ飛び立って
略奪先を見つけるだけの科学力があるとは到底思えません。フリーザに声をかけられる前、サイヤ人は惑星ベジータで、
限られた資源を奪い合って、もうジリ貧状態だったと考えていいでしょう。
そこにフリーザがやってくるわけです。あなた達は強いですね、凄いですね。その強さを生かして、私に星を調達して
くれませんか?侵略先までの交通手段は提供しますし、代償ももちろん払いますよ、と。ヤッホー!ですよね。仕事キター!ですよ。そりゃもう身を粉にして働く
だろうし、フリーザ様々ってなもんでしょう。
これはまた別の映画の話になるんですけど、実はサイヤ人は惑星ベジータの原住民ではありません。もともとツフル人
という別の人種が住んでて、そこにサイヤ人が流れ着き、移住させてもらったんです。ツフル人はサイヤ人とは対照的に
頭が良く、文明的な人種でしたが、筋肉バカのサイヤ人をバカにしてこき使います。サイヤ人は奴隷生活の果てについに切れて、
反乱を起こしました。ツフル星を乗っ取って、自分たちの王の名を冠し、「惑星ベジータ」と星の名を改めたのです。
で、自分たちの星にしてみたはいいけど、やっぱ強いだけだから生活していけなかったんですよね。貧乏生活の中で
コンプレックス感じてたと思います。やっぱり俺たちツフル人みたいに頭良くないし、このまま滅びてしまうのかな、と。
そこへ強さをダイレクトに評価される仕事にありつけたんですから、サイヤ人はプライドの面でも凄く助けられたんじゃ
ないでしょうか。実力評価と生活資源、その二つをもらえたんだから、そりゃ忠誠も誓うよね、という話です。
それでもやっぱり罪は罪、人殺しはやっちゃいけないことなのです。生まれた日からそれが当たり前だったとはいえ、
免罪符にはなりません。バーダックが死んでから20数年後、フリーザと悟空はこんな会話を交わします。
悟空「いい加減にしろ。罪もない人々を次々と殺しやがって。貴様一体何人の命を殺めたら気が済むんだ」
フリーザ「罪も無い人々だと?笑わせるな。貴様らサイヤ人は、罪も無い者を殺さなかったとでも言うのか」
悟空「だから滅びた……」
悟空、ちゃんと分かってます。数々の命を殺めた者、そしてこれからも殺めるであろう者。彼らが罪を償うには、
やはり死をもってするしかないのです。
呪われた未来、死にゆく定め。サイヤ人は力をもって数々の星を滅ぼすけれど、その力ゆえにフリーザに危険視され、
滅ぼされ、根絶やしにされてしまう。救い主と信じていた者によって。何とも皮肉で、悲惨な話です。それが見えてしまったバーダックの衝撃、恐怖は
どれほどだったでしょう。カナッサ星人、土壇場で凄い復讐を思いついたもんです。
自分の立っているこの星が間もなく消滅するのが、予知によって見えてしまう。仲間に危険を訴えても、誰も信じてくれない。
危険を払いのけようにも、相手はフリーザ、全宇宙の戦闘民族を統べている化け物。想像するだに恐ろしい状況です。
普通、絶望しますよね。だけどそこで、バーダックは拳を握って言い放つのです。
「俺が……この、俺が……未来を、変えてやる!」
親父かっけえぇぇぇ!!(うるさいよ)この不屈の闘志。絶望の淵で、自らを信じる力。駄目ですこの人、格好良すぎます。
このアニメの放映時、漫画(ジャンプ)ではとっくにフリーザが登場して、悟空が戦うべき敵キャラとして描かれています。
バーダックの負けを、視聴者は百も承知な訳です。無駄な抵抗、負け戦。そうと分かっている子どもの目にも、バーダックは
抗い難い魅力を持って映りました。勝ち組負け組とかいうけどさぁ、やっぱ勝ち負け以前の生き様ってあるよね(酔っ払いか)。
これで終わっちゃっても、いいっちゃいいんですけど、やっぱり子どものアニメですから、後味の良さが欲しいですよね。
そこもさすがはDBアニメスタッフ、配慮を欠かしません。ちゃんと悟空が地球に到着し、人の良さげな老人に
拾われるところで幕を下ろしてます。
これによって、物語は更なる深みを持ちます。運命と反抗っていうテーマを一度決着させたうえで、更にもう一つ上の
テーマを持たせている。それは、呪われた運命からの脱却です。
悟空はその「弱さ」ゆえに、命を救われます。恐らくフリーザは、サイヤ人の派遣スケジュールを調べ上げたうえで、
全員が母星にいるときに惑星ベジータを叩いている。攻撃をしようというとき、ちょうど派遣先にいたトーマ達を、
側近使ってきっちり潰してるところから、それは推測できますよね。「最下級戦士の糞ガキ」である悟空は、その
スケジュールチェックから漏れてしまうぐらいの、どうっちゃいい存在だったわけです。攻撃が間近に迫ったときに
生まれたからチェックに間に合わなかったということも考えられますが、もし上級戦士の息子とかだったら、やっぱ
上に報告がいって、派遣延期になってたんじゃないかなぁと思います。
死から逃れたことでまず、民族の「呪われた運命」に殉じなくて済んだ。しかし彼の強運はそればかりでは済みません。
悟空は老人に引き取られて間もなく、頭を強く打ち、サイヤ人としての使命を忘れてしまいます。地球を侵略する
宇宙人から、地球を守る救世主へ、180度運命を転換させてしまったのです。このことで悟空は、罪なき人の血に汚れ、
その罪によって死ぬという、彼自身の「呪われた運命」からも脱却します。
引き取られて早々頭打つって、おいおい爺さん何やってんだよって話ですがw、それによって悟空は
救われてしまうんです。もっと言うと、この爺さんが悟空を拾って育てなかったら、どうなっていたか。
赤ん坊なんだから大人の庇護がなければ死んでしまうんじゃないか、と思うところですが、聞いた話によると、それって
人間だけなんだそうです。自然界には、生まれて数日で自活する生き物はたくさんいる。フリーザ軍本部が赤ん坊の悟空を地球に
送り込み、侵略を任せたところを見ると、サイヤ人もその類だったんでしょうね。放っといたら、すくすく育って、
数年のうちに立派な侵略者になってたことでしょうwだけど何の因果か、優しい老人に見つけられ、拾われる。戦闘民族としての
記憶を失い、老人の愛を一身に受けながら、真っ直ぐに育つ。結果、強い奴と戦うのは楽しいけど(スポーツ感覚)、
弱い者いじめは絶対しない、サイヤ人史上初めての正義の味方になっちゃうわけです。これは老人の「優しさ」によって、
悟空が第二の意味で運命から脱却できた、と見ていいのではないでしょうか。
悟空が老人に拾われるシーンは、この運命からの解放を、実に鮮やかに描き出しています。あやされてキャッキャと
笑う悟空と、「こりゃ元気の良い子じゃ」と目尻を下げる老人。その数十メートル先では、悟空が乗っていたポットが
大地にめり込み、黒々と深く巨大なクレーターを作っているのです。
「弱さ」と「優しさ」によって、血の運命から逃れた少年。長じて誰よりも強大な戦闘力を備えながら、一度たりとも
弱い者を傷つけることのなかった彼は、呪われた運命の根源、フリーザ―――サイヤ人を含む最も多くの血に呪われた存在―――と対決します。そして、前述の
会話に続けてフリーザにこう宣告するのです。「貴様は俺が滅ぼす」。何とも劇的な、運命の結末ではありませんか。
夢々しい、少年漫画的な勧善懲悪説かもしれませんが、世の中の不条理さを垣間見る大人になったからこそ、
こういうのは心に響きます、ほんとに。
長々と、本当に長々とすいませんでした(深々と礼)。ここまで読んでくれた方へ、本当にありがとうございました!
(追記)8月5日まで記載していたお礼の言葉について、ダイ大小説を楽しみにして下さっている読者の方への配慮が足りない、との
ご指摘を頂き、謹んでこれを受け止め、削除させて頂きました。不愉快にさせてしまった皆様、本当に申し訳ありませんでした。
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